太陽です。
僕は自分のひきこもり経験を他の人の前で話す機会がけっこうあります。
典型的なひきこもり状態を経験した事・そこから少しずつ回復してきた事・ひきこもり支援団体でスタッフをしている事などもあり、「経験を話してもらえませんか」と声をかけて頂くのです。
今回もとある勉強会の集まりに、元ひきこもりとして経験談を発表してもらえないかという依頼があり、参加してきました。
その集まりに参加し、自分の過去の経験を話す中で、僕自身とても大きな学びがあったんです。
現在ひきこもりの人や、生き辛さを感じている人にとっても、僕の経験した事が何かしらの役に立つのではないか?と思ったので、ぜひ記事にして共有できれば嬉しいと思いました。
目次
ひきこもり関係の勉強会。どんな集まり?
対象となるのは、ひきこもりの子どもがいる親御さんです。
ひきこもりの自分の子どもに、どう接していいか分からない。どんな言葉をかけていいか分からない。親として何かしてあげられる事はないのだろうか・・・それが分からずに困っている。
そんな親御さんはとても多いんです。
そこで、専門の先生に来て頂いて、子どもへの接し方や関わり方を始め、【変化のために何をすべきか】を親御さん自身が勉強しようという勉強会です。
親子関係を見つめ直す機会でもあります。
全3回で行われる勉強会で。その最終日にあたる3回目が、ひきこもりを経験した人のひきこもり経験談を聞くというプログラムになっているんです。
実際にひきこもり、そこから立ち直ってきた人の話しを聞いて、何かしらの気づきや学びを発見して頂く。
そして自分の子どもと関係の改善をしたり、現状を変えていくためのきっかけをつかんでもらおう・・・という訳なのです。
ただひきこもり経験の話しを聞くだけじゃなく、気になる事を質問したりもできるなど、元ひきこもりの人との交流の場でもある勉強会。
その勉強会に、ひきこもり経験者として僕をよんで頂いた・・・という訳なんです。
僕が自分のひきこもり経験を話す、2つの大きな理由
この勉強会に呼んで頂くのは、今回が始めてではありません。
初めて参加させていただいたのは2010年、28歳の時。9年ほど前のことです。まだひきこもり支援団体のメンバーとして通っていた頃でした。
今ではひきこもり支援団体のスタッフとなり、当時とは立場も違っているのですが・・・
僕がこの勉強会に参加するに当たって変わっていない事が2つあるんです。
僕が自分の経験を話す、大きな大きな理由です。
【自分のひきこもり経験を話す事で、少しでも誰かの役に立ちたい】
【自分のひきこもり経験を話す事が、自分自身の成長につながる】
という2つの理由です。
理由1:少しでも、誰かの役に立ちたい
初めてひきこもり経験の自分史を話した時も・・・「あなたが自分の経験を話す事で、必ず誰かの役に立ちますよ」という事を言って頂いた記憶があります。
初めて人前で自分のひきこもり経験を話すと言う事で、緊張しかなかったのですが、勇気を出して話したんです。すると・・・本当にその通りでした。
話し終わった後の感想で、『ものすごく良かった』『話してくれてありがとうございました』という言葉をたくさん頂いたんです。
引きこもり経験を話して感謝された事なんてなかったので・・・とても驚いたのと同時に『もしかして僕にもなにか出来る事があるんじゃないか?』と思えた瞬間でした。
自分の中では暗黒の歴史とも思える、辛いだけのひきこもり経験でしたが、『自分の引きこもった経験にも、何かしら意味があった』と、この時初めて感じることができたんです。
(ものすごく強烈な体験として、僕の中に残っています。)
それがきっかけとなり、今度は支援団体が月一回発行しているマガジンにひきこもり経験を文章として載せて頂くことになりました。
全4回・4ヶ月にわたって、けっこうな文字数で載せてもらったのですが、その文章にもすごく反響がありました。
さらにそれがきっかけとなり、他のメンバーのひきこもり経験とあわせて、本まで出版して頂くことになりました。
それからというもの、定期的にその勉強会に呼んで頂くようになって、今回でたぶん10回目くらいになると思います。自分の経験を話すたび、『とても勉強になった』『あなたの話を聞けてよかった』と言って頂けて。
【誰かの役に立っている】【他者に貢献できている】と事がとても嬉しいです。
理由2:自分の経験を話す事が、自分自身の成長につながる
全く初めての他者の前で、自分の経験を話すこと。それもひきこもり経験という、自分の中の暗黒の部分の経験を話す事は、ものすごくエネルギーがいることなんです。
やはり緊張しますし、『こんな事を話して、どう思われるだろうか・・・』と不安にもなります。
ですが、不安や緊張を乗り越えて行動する事で、ものすごく学びがあり自分自身の成長につながるんです。
僕は常々、「思い切って行動する事で経験が得られ、経験を積み重ねる事で世界が広がる」と思っています。
人前で自分のひきこもり経験を話す事も、その1つ。
親御さんの学びや気づきのために話すだけでなく、実は僕自身も勉強・生長させてもらっているのです。
思い切って行動する事の大切さに関しては、次の記事が参考になると思いますので、ぜひ読んで頂ければと思います↓↓
そして今回も、同じ気持ちで臨みました。
『僕が自分のひきこもり経験を話す事で、必ず誰か救われる人がいる』 『少しでも、何かの役に立ちたい』 『自分自身の成長につながる』
僕が勉強会に参加させて頂く、最大の理由です。
僕の親も、過去にこの勉強会に参加していた
この、ひきこもりの子どもをもつ親の勉強会。
実は・・・うちの父と母も、過去に参加したことがあるのです。その当時僕はひきこもりの真っ最中。
両親は、『親が出来る事は何かないか?』という気持ちからその勉強会に参加した・・・という事を、ずいぶん後になってから聞きました。
うちの父と母は、ひきこもりを経験した若者が勉強会で自分の経験をしっかり話してる様子を見て、こう思ったそうです。『太陽もいつかひきこもりから抜け出し、こんな風になってくれればどんなに良いだろうか・・・』と。 これもずいぶん後になってから、聞きました。
その後、僕は引きこもりから抜け出し、今度は自分の経験を話すようになったのですが・・・それと全く同じ事を、僕も言われたんです。
「ひきこもってるうちの子が、あなたみたいになってくれたらどんなに良いか・・・」と。
この時、とても不思議な縁みたいなものを感じました。
経験を話すのは、僕ともう一人女性の方
さて、前置きが長くなりましたが、ここからが勉強会当日のお話です。
発表に使う資料や書類を用意し、緊張感を持って家を出ました。会場に15分ほど前に行くと、すでにたくさんの親御さんや、施設のスタッフさんがいらっしゃっていました。
親御さんは全部で15名ほどの参加です。
それと僕の他にもう一人、自分のひきこもり経験を話す元ひきこもりの方が来ていました。この勉強会でひきこもり経験を話す人は、2人以上なんです。(今回は2人)
初対面の女性の方で、20代半ば~後半くらいと思しき方でした。
初めての女性の方が一人いらっしゃると言う事は前もって聞いていたのですが、その方の経験談を聞く事も実はすごく楽しみにしていたんです。なぜかと言うと、他の方のひきこもり経験を聞く事で僕自身ものすごく勉強になりますし、学びも多く、必ず得るものがあるからです。
その方と挨拶と自己紹介をして、自分の席に座ります。ほどなくして、勉強会が始まりました。
すごく心に残った、女性のひきこもり体験と2つの言葉
勉強会の前半は、僕ともう一人の方のひきこもり経験の発表から。
僕は何回も経験があって慣れていますが、その女性は人前で話すのも初めてということで、すごく緊張されている事もあり、僕から話す事になりました。
僕は自分のひきこもり経験を話すとき、4つの期間に分けて話します。
1:ひきこもる前の時期(0歳~20歳)
2:ひきこもり真っ最中(20歳~26歳)
3:ひきこもりを脱出して、外で活動を始めた(26歳~31歳)
4:ひきこもり支援団体のスタッフとして(31歳~現在)
長くなるので割愛しますが、いずれ記事にして詳しく書きたいと思います。
僕の発表が終わり、次は女性の番。
この方のお話が本当に良くて、ものすごく心に残りました。この方のお話を聞けただけでも、勉強会に参加して良かったと思えたほどです。
【勉強会の内容はその場だけに留め、口外しない】という決まりがあるため、詳しくは書けないのですが・・・
本当に心に残った部分だけはご紹介したいと思います。
その女性は親との関係がきっかけでひきこもりになった。
だけど周りの人に支えられるうちにエネルギーがわいてきて、ひきこもりを抜け出し、いいまでは仕事をされているそうです。
女性の発表で心に残ったのは、2つの言葉でした。
女性の言葉1:あなたは独りじゃない!
ひきこもって苦しんでいると、どうしても孤独になってしまう。
だけど、あなたの周りに力になってくれる人がいるし、心から話を聞いて、悩みを共有してくれる人もいる。
あなたは、独りじゃない。
その言葉が、お話の中に何度も出てきて・・・となりで話を聞いていて、泣きそうになりました。
僕自身もひきこもっている時にそうだったのですが、ひきこもってずっと家にいると、物事を悪い方悪い方に考えてしまうんです。
そこから、『こんなに苦しいのは自分だけなんだ・・・』と、孤独感にもつながり、負の連鎖から抜け出せなくなってしまう。希望を感じられなくなる事が本当に辛いんです。
ですが女性が真摯にお話されている姿と、ご自身の経験から語られる言葉から、
『本当に、人って独りじゃないよね』と思うことができたんです。
そして、女性はこうもおっしゃっていました。
女性の言葉2:人は、やる時はやる力が全員にある!
「人は、やる時はやる力が全員にある!」と。
この言葉もすごく心に刺さりました。
人は落ち込んでいる時は、動くためのエネルギーがなくなってしまいます。特にひきこもっていると余計に『自分は何も出来ない』『自分には力がない』と考えてしまって、ますます動く事が出来なくなってしまう。
この女性も、ひきこもっている時はほとんど動けなかったけど、勇気を出して活動をしたとおっしゃっていました。
そして今は、ひきこもりの人をサポートする活動もされているそうです。
人は、やる時はやる力が全員にある。この言葉がものすごく力強く、勇気を頂けました。
自分は一人じゃない、人は誰しも動く力があると改めて気づかせてくれた、心に残る女性の発表でした。
それと同時に『言葉って、こんなに人にエネルギーを届ける力があるんだ・・・』と思いました。
親御さんからの質問に答える
僕と女性の話が終わり、前半は終了。ここで一旦、10分ほどの休憩をはさみました。
そして後半は、親御さんからの質問に答える質疑応答の時間です。
この時に、特によく出る2つの質問があるのでご紹介したいと思います。
よくある質問1:ひきこもっている時に、親にして欲しかった事は?
僕は元ひきこもりとして、何度も親御さんからの質問に答えているのですが、この質問は必ず出る質問なんです。ひきこもっている時に、親にして欲しかった事は?
きっとみんな、自分の子どもともっと接したいけれど、どうすれば良いのかよく分からない・・・という方が多いのだと思います。
この質問に対して、いつも僕が答えていることがあります。
それは【子どもの気持ちに寄りそって下さい】という事です。
親の気持ちや価値観を子どもに押し付けるのではなく、子どもの言葉に耳を傾け、気持ちを受け止めて、共感してあげること。
僕は自分の親の例も出して話しています。僕の両親は最初、僕の気持ちや辛さを理解できない感じでした。
ですが親自身が勉強したり、カウンセリングを受けたりして、少しずつ変わっていったんです。 そして、僕の気持ちに寄り添ってくれるようになったんです。
自分の親が良い方向に変化している事が僕自身にも伝わってきて、『昔と違って、親が変わっている・・・』と気づいたんです。
そうすると、それが僕自身を変えるきっかけにもなりました。
『親が変わってくれて、僕もしっかりしないといけない。やれる事は少しずつやっていこう・・・』と変化していったんです。それが、ひきこもりを抜け出してひきこもり支援団体に行くことにつながりました。
よくある質問2:医療機関や支援団体を勧めるタイミングは?
もうひとつ、親御さんからとても多い質問が
【自分の子どもに、診療内科やカウンセリング、引きこもり支援団体の事を教えたいのだけれど、どんなタイミングですすめればよいのでしょうか?】というものです。
この質問も、ほとんどの勉強会で出ます。
この質問に対する僕の答えは、「基本は見守る姿勢が大切」というものです。
医療機関を受診したり、ひきこもり支援団体に通う時に、最も大切な事って、なんだとお思いでしょうか?
それは、ひきこもってる人本人が自分の意思で、「よし、行ってみよう」と思うことです。
いくら親が『病院に行ってほしい』『支援団体に通って欲しい』と思っても、本人にその気がなければほとんど意味がないと考えています
本人に気持ちがないのに勧めすぎると、しつこいと思われたり、かえってひきこもりの症状が悪化したりします。
そこで僕のオススメの方法があります。
様子を見ながら1度や2度くらいは、「こんな所があるけれど、もしよければどう?」とすすめてみるんです。もし反応が悪くても大丈夫です。
「もし行きたくなったら、いつでもサポートする用意があるので、その時は言ってね」と伝えておき、あとは見守るのです。
親からすると、引きこもっている子どもの事がとても心配で、あれこれ口出しや手出しをしたくなってしまうと思います。ですがそこはグッと我慢して、子どもが自分から行ってみようと思うまで見守るスタンスがとにかく大切。
一見するとものすごく遠回りのようですが、実はこれが一番の近道です。
僕も、心療内科・カウンセリングも、引きこもり支援団体も、全て自分から行こうと思って行きました。
情報は事前に教えてもらっていましたが、親もしつこく勧めてくる事はなかったです。
今回の勉強会もこの2つの質問が出たので、僕の実例を交えながらお答えしました。
最後にこれだけは伝えておきたい事
親御さんの質問に答えているうちに、あっという間に勉強会終了の時間になりました。
最後に、「これだけは伝えておきたい事って、何かありますか?」ということだったので、
僕は「今はとても辛いと思いますが、必ず良くなるという希望を持ってほしい」ということを伝えました。
もう一人の女性は、「あなたは一人じゃないので、それだけは覚えておいて欲しい」とおっしゃっていました。
これで勉強会は終了、2時間があっという間にすぎました。
終了後、僕の元にやってきた一人の親御さんが・・・
勉強会終了後は少しの間フリータイムとなっています。
そのフリータイムでは、話を聞いて頂いた親御さんに個人的に声をかけられて、色々お話したりします。
色んな事をさらに質問される方や、僕のいる引きこもり支援団体について詳しく聞きたいと来られる方もいます。
ひきこもり体験談の本を買っていってくれる親御さんもけっこういらっしゃいます。
何人かの親御さんとお話してるうちにフリータイムも終わり、一人また一人と帰っていくのを見送ります。
ほとんどの親御さんが帰り、僕もそろそろ帰ろう・・・と思っていた時のことです。
最後に一人残っていた親御さんが、僕のところにやってきたんです。僕の母と同じくらいの年齢と思しき女性の親御さんでした。
その親御さんは僕の顔を見ながら、こう言ったのです。
『今日は貴重なお話をして頂いて、ありがとうございました。あなたが立派に話されてるのを見て、元気になられて、本当に良かった・・・』
その親御さん、目を潤ませている様子。すると・・・
『これまで辛い事もあったと思います。お話を聞いていたら、なぜだか涙が・・・』
と、その親御さんが涙を流されたんです。
突然の事で、僕も言葉を失いました。親御さんは、まだ涙を流されている。
僕は親御さんに、ひきこもりのときは辛かったけど、今こうして僕のひきこもり経験を話して何かのお役に立てていると思うと、ひきこもった経験には意味があった・・・という事を話しました。
親御さんは、うなずいて聞いています。
今はとても辛い時期と思いますが、必ず良くなるということを信じてやっていきましょう、ということも話しました。
親御さんは、『ありがとうございましいた、これからも頑張って下さい』と最後に言って、去っていきました。
勉強会には何度も来ていますが、こんな経験は初めてです。
その親御さんの涙を見て、僕も胸が熱くなるのを感じました・・・。
今後も自分の経験を話す機会があるなら、少しでも何かの役に立てて、他者に貢献できるなら、ぜひまた来よう。親御さんの涙を見て、その思いを強くした勉強会となりました。
そして僕も帰路につきました。
まとめ:人と関わると色んな学びや成長がある
引きこもっていた時は、対人恐怖症があり、人とかかわるのがすごく不安で怖かったのですが・・・元気が出てくるにつれて、「積極的に他の人と関わっていきたい」と思えるまでにエネルギーが出てきました。
一人暮らしをするにあたって、「人が多くてにぎやかな場所」にしようと決めたのも、たくさん人と関わりたいと思ったからです。
今回、勉強会に参加して、初めての女性の方の経験談を聞けたこと、親御さんと交流できた事。勉強会を通して学びがありすごくエネルギーを頂けたんです。
こういうのも人との関わりの1つで。
人と関わる事で気づきや学びがあり、そこからさらに成長につなげる事が出来ると思うんです。
ひきこもっていて、人と話すのが苦手だったり不安と言う方も多いかもしれません。
そんな方は、不安な自分の気持ちは受け入れつつ、「人と関わる事はすごくエネルギーになり、成長につながる」という事を心のどこかに留めておいてもらえれば、と思います。
今すぐは出来なくても、やがてできる時は必ず来ます。「人は、やる時はやる力が全員にある!」の言葉通り。
僕自身もこれからも色んな事があると思いますが、希望を忘れずに、一つ一つ頑張っていきたいと思います。
太陽