太陽です。
元引きこもりのAさんの経験談を聞く勉強会の続きです。
前回は、Aさんは辛い引きこもりからどのように変わり、なぜ明るく生きれるようになったのか?
主に気持ちの「変化と成長」についてのお話でした。
【小さい事を積み重ねること】【人と関わること】この2つが、変化と成長のための大切な要素という事でしたね。
前回の記事はこちらからどうぞ↓↓
そして今回は、「引きこもりからの就労」がメインテーマです。
引きこもりと切っても切れないのか、仕事についてですよね。
・引きこもりから就労するためにはどうすればいいのか?
・せっかく就労しても、長続きしない。どうすれば続けられる?
これは、引きこもり経験のある人なら、必ず直面する事ではないでしょうか。
Aさんからの話をもとに、仕事について気づいた事、役に立ちそうな事を書いていこうと思います。
目次
Aさんの就労経験
Aさんには、引きこもりから現在までに至る変化と成長だけでなく、具体的な就労経験についても多く語って頂きました。
やはり元引きこもりの当事者であるため、引きこもりからの就労経験のお話は一つ一つがとても勉強になり、考える事が多いです。
現在は、フルタイムで仕事をされているAさん。引きこもり脱出後の2年間は、短期アルバイトを中心に少しずつ就労経験を積み、それから現在の仕事に就いたということでした。
しかし、そこに至るまではかなり大変な時もあったそうです。
特に、現在の仕事を始めたばかりの時は、慣れない仕事ということもあり精神的に相当苦しかったということで、当時のエピソードも色々話してもらいました。
ですが、その辛い時期も折れずに何とか乗り越え、日々成長し、今では職場で色々な仕事を任されるまでになったというと。
純粋にすごいと思いました。
それと同時に、僕の中である記憶が脳裏をよぎっていたのです。
そう、久しぶりに一般就労に挑戦して失敗した、4月の苦い経験の記憶が――。
4月の就労を思い出していた
今年4月。4月と言うと新年度の始まり、新しい生活が始まる季節。早めに咲いていた桜は散り始めていたけど、街には真新しいスーツに身を包んだ人や、大学の入学式に出席すると思しき人があふれ、見るからに初々しくて新鮮な雰囲気を振りまいていました。
そんな人を横目に、僕は足早にとある場所へ向かっていました。そう…今日は僕の初出勤の日。
この時の僕は希望に満ちあふれていました。アルバイトだけど一般就労に挑戦し、採用された。しかも、希望していた業界だった。
これまでは引きこもりからの就労に本当に苦労したが、それも終わり。今日から、新しい生活が、そして新しい人生が始まる!
………
………
はずでした。
だが、現実は甘くなかったです。わずか2日で逃げるように仕事をやめ、久しぶりの就労への挑戦は幕を閉じたというのは、以前に記事にした通りです。
今にして振り返れば、もう少し頑張れたんじゃないかとか、もっと上手くやる方法があったんじゃないかとか、色々考えてしまいますね。
ですが、自分なりに精一杯やってみたけど、体力的にも精神的にも、限界だったのかもしれません。
そんな経験があるがゆえ、辛い瞬間を折れずに乗り越えてずっと仕事を継続しているAさんの事が本当にすごいと思ったんです。僕だったら、やはりすぐにやめてると思います。
疑問がわいてきた
ふと、ここで一つの疑問が湧いてきました。
僕はせっかく始めた仕事なのにしんどくなってしまい、粘れずにすぐやめてしまった。
一方、Aさんは苦しさに折れずに粘り、乗り越え、継続する事ができた。
いったいAさんはどのようにして持ちこたえる事が出来たんだろう?
職種や業種は違いますが、仕事を開始して間もなく非常に苦しくなったという状況は非常によく似ていると感じました。
かたや、すぐやめてしまった。かたや、乗り越える事ができた。
この差を生み出したものは、一体なんだったのだろう?なぜAさんは折れなかったのか?
どうしても聞いてみたいと思い、Aさんに質問する事にしました。
「なぜAさんは折れずに続けることができたのですか?どのようにして粘れたのですか?」
そこで、仕事を続けていくために大切な2つの力があるというAさんの考えを聞かせてもらったんです。
それが【仕事体力】と【ストレス変換力】です。
仕事をする上で最も重要な土台・仕事体力
仕事体力とはどんなもの?
体力というと、色々ありますよね。
日常生活を送るための体力、運動をするための体力、病気をしない体力など。
ですがAさんによると、仕事体力というものはそういった体力とはまた別のものであり、文字通り「仕事をするための体力」のようです。
「働くためには、【働くための体】が必要だと思います」というのが、Aさんのお話でした。
先ほどの質問の答えについて。どうしてAさんは今の仕事を始めたばかりの辛い時、折れずに頑張ることができたのか?
それは、
「仕事体力をつけていたおかげで、粘ることができたから」というものでした。
頑張れた原因は他にも色々あるけど、仕事体力の存在が一番大きくものを言ったということです。
確かに、僕が4月の就労失敗は、仕事体力が足りなかったかもしれない。
それなら、Aさんはどのようにして仕事体力を身につけたのだろう? 仕事体力の付け方も教えてもらうことができました。
仕事体力を身につける方法
この記事の前半でも書きましたが、Aさんは引きこもり脱出後の最初の2年間は、短期の仕事を中心に就労経験を積み、それから現在のフルタイムの仕事を始めた。
そして、実は最初の2年間の短期就労の時に、仕事体力を少しずつ身につけたということです。
ここで驚くべき話を一つ聞きました。Aさんが一番最初にしたのは3時間ほどの短期アルバイトで、しかもその次の仕事をするまでに半年もの間をあけたそうです。
今は普通にフルタイムの仕事をこなしているAさんでも、最初は3時間からスタートし、仕事と仕事の間に6か月も間隔をあけていたなんて…!?
Aさんはその後は少しずつ仕事を増やし、色々な仕事を経験し、2年かけて仕事体力の土台を築いたということ。
その仕事体力の土台が、フルタイムの仕事を始めたばかりのピンチの時を乗り越える力になったということでした。
Aさんからの提案 ~短期の仕事から始める~
そして、Aさんから仕事体力をつけるための一つのアドバイスをもらいました。
「いきなりフルタイムではなく、短期の仕事などから少しずつ始めるのはいかがでしょうか?」というものです。
引きこもり経験があると、どうしても心の焦りが出てきてしまいますよね。早く何とかしないといけない、という不安や心の焦りです。
なのでいきなりフルタイムで働いたり、正社員を目指したりと、いきなり頑張りすぎてしまう人も多いとかもしれません。
ですが、短期の仕事などからスタートして、少しずつ仕事体力をつける方が、結果的に近道になる。
今はスマホでも便利な仕事探しアプリがあり、短期での仕事をする事が出来るみたいです。それを利用して、とりあえず出来そうな仕事を1日だけでも行ってみるのも良いかもしれない、というお話でした。
もう一つの重要な力・ストレス変換力
ストレス変換力とは?
次は、仕事をするために必要なもう一つの重要な力【ストレス変換力】についてのお話です。
仕事をしていると、やはり日々ストレスはありますよね。
人間関係であったり、仕事が上手くいかなかったり、ちょっとしたトラブルであったり。大小の差はあれど、ストレスは必ずついてまわるものです。(これは仕事に限らないものかもしれません)
ただでさえ、ストレスの多い世の中です。
ちょっとしたストレスでも、積み重なってくると、だんだん身も心も疲弊していきますよね。
誰しも、ストレスと無縁でいる事はできません。
ここで大切なのが、ストレス変換力。
Aさんによると、外部から入ってきたストレスを、自分の中で別のものに変換し、ストレスを受け流す力の事だそうです。
ストレス変換力の例
ストレス変換力の例を紹介すると、
・考えすぎないようにする
・疲れたら休む、寝る
・別の事をして、気にしないようにする
・他の人に話を聞いてもらう、助けを求める
・淡々として反応しない
と言った感じのものです。
Aさんは、日々のストレスを溜め過ぎず上手いことストレスを受け流す力を、少しずつ身につけたという事でした。
その結果、仕事で嫌な事があっても、以前ほど気持ちが沈まなくなり、回復も早くなったそう。
Aさんの言わんとする所はきっと、自分に入ってきたストレスをぎゅっと握りしめないで、適度に手放して執着しないようにする事なのかな?と思いました。
ストレスって、起こった事そのものから発生するのではなく、起こった事を自分の中でどのように解釈するかで決まりますよね。
ストレス変換力というと、ストレスを全く別のものに変えてしまうような印象ですが、僕はそうではないと思いました。
Aさんが伝えたいのはおそらく、ストレスそのものは消せないけど、ストレスとの向き合い方を工夫する事で、ストレスからダメージを受けすぎないようにする事ではないかと感じました。
つまり、考えすぎないようにするとか、休んでしまうとかして、ストレスに集中し過ぎないようにうまく意識をコントロールする事なのではないかと。起こってしまったものは仕方ないのですしね。
Aさんのお話は、仏教のお話を聞いているかのような気持ちになりました。
Aさんがストレス変換力を身につけた方法
ですがAさんも最初はそれほどストレス変換力が高くなく、仕事の事でものすごく落ち込んだり、ずっと心配して不安になったり、しんどい時期があったそうです。
そんなAさんが、どのようにしてストレス変換力を身につける事が出来たのか?
お話を聞いていると、やはりその鍵は「人との関りの積み重ね」にあるようでした。
仕事をして、職場の人と関わる。会話を重ねる。仕事以外の交友でも、人と関わり、会話を重ねる。
Aさんは積極的に人と話し、人間関係を経験していく中で、色々な人がいて色々な考え方がある事に気づいていったそうです。
そして、自分の気持ちも正直に言えるようになったり、だんだんと人に対して構えることがなくなっていった。気づけば、自然とストレスコントロールできるようになっていたという事でした。
前回の「変化と成長」でも、人と関わる事の大切さを書いたのですが、ストレス変換力もやはり対人関係の中で身につけるものというお話です。
やはり、人との関りの中に鍵があるのですね。
4月の就労を改めて振り返ってみると?
以上が、Aさんから教えてもらった仕事を始めて継続するために必要な二つの力
【仕事体力】と【ストレス変換力】についてでした。
Aさんの経験がそのまま全ての人に当てはまるとは限らないですが、きっと引きこもりから仕事をしたいと思っている多くの人にとって参考になる部分が多いのではないでしょうか。
改めて僕自身の4月の就労を振り返ってみると、仕事体力もストレス変換力も、どちらも全然足りなかったと感じますね。
仕事体力がないままいきなりフルタイムで未経験の仕事を初めてしまいましたし、職場の先輩から厳しい事を言われた時に感じたストレスを上手く処理できずに、ずっと引きずって落ち込んで。結果、すぐにやめてしまった。
きっと、『早く何とかしないといけない』という焦りや不安が強く、自分の容量を大幅に超えて無理をしてしまったんだと思います。焦って、いきなりフルタイムを目指してしまった。
ですが、Aさんのお話を聞いているうちに、少し考え方が変わりました。
短期の仕事から初めて仕事体力をつけ、もっと人と関わって会話をして、ストレス変換力も身につけよう。
今出来る小さい事をやって、小さな成功体験を積んでみよう。
小さな一歩が、大きな前進につながる。そこから始めてみようかな?と思えたんです。
前回のお話、引きこもりからの変化と成長にもつながる話です。
Aさんのお話は全てがつながっているし、やはり実際に引きこもりから就労し、本当の意味で元気になった人の言葉には重みがあると感じました。
仕事体力もストレス変換力も、実際にやる事でしか身につかない
仕事体力とストレス変換力。この2つの力を育むことができれば、本当に大きな助けになると思います。
それと同時に、一つ気を付けなければいけない事にも気が付きました。
それは、どちらも実際にやらなければ身につかないということ。
仕事体力は仕事をするための体力であり、仕事をしていく中で身に付く。裏を返せば、仕事体力は仕事をする事でしか身につかない。
ストレス変換力も対人関係を通して身に付く。ということは、対人関係を重ねることでしか身につかない。
最初はものすごくエネルギーもいるし、時間もかかる作業でしょう。
だからこそ、Aさんも自身の経験と照らし合わせ、最初は短い時間から少しずつ働く事をすすめてくれたのだと思います。
そして最初の行動は、最初の一歩は、やはり勇気が必要なのかなと思いました。
まとめ:やってみてから決めてもいい
最後に、Aさんが語っていた印象的な言葉をご紹介し、今回の記事のまとめにしたいと思います。
やってみてから決めてもいい。
自分には合わないと思っても、合うことだってある。
自分の中に限界を作らなくてもいい。
その言葉を聞いて、ちょっと気持ちが楽になりました。
深刻になり過ぎず、とりあえずやってみればいいかも。やってみればやってみたなりに結果も出るし、経験は必ず今後に活かせるはず。
自分で自分の事を縛り過ぎなくてもいいかも。
そんな言葉を言えるAさんはきっと心の芯が強く、なおかつ柔軟さもある人なんだなと思いました。
僕も見習って、前に進んでみよう!と、勇気と希望をもらえた勉強会でした。
【この記事のまとめ】
①仕事をする上で大切な二つの力、仕事体力とストレス変換力を身につける
②いきなり身に付くものではないので、短期の仕事などから少しずつ始めるのが近道
③勇気を出して小さな一歩を踏み出すことが、大きな前進につながる
太陽