太陽です。
今回は、引きこもりからいきなり就職して大失敗した話、3部作の最終回です。
大工の親方に恫喝され、無理して建設現場に行った結果、大やけどを負ったのです。正直トラウマになるほどの経験で、今思い返してみても怖いです。
しかし、こんな経験からでも、色んな事を学べるかもしれない。人生の勉強かもしれません。
目次
前回までのあらすじ
28歳にして、引きこもりからの就職を思い立った。とある工務店に採用してもらい、大工の見習いとして働く事になった。
しかし…待ち受けていたのは、あまりに厳しい現実だった。
39℃の猛暑の中で12時間も耐え続けた結果、心はポッキリ折れてしまったのだ。もう続けるのはムリだ…僕は、初日にしてやめることを決意。
これから親方に、やめる事を電話で伝えなければならない。しかし本当の地獄はここからだった。
(詳しい記事 ①応募・面接編、②地獄の仕事編は、こちらをどうぞ↓↓)
緊張するが、親方に電話しなければならない!
今回は、最初から最後まで、全部自分でやると決めていた。これも引きこもりを脱出するためだ。
例え長続きしなくても、最後の電話まで自分でやる。自分の行動に最後まで責任を持つことが、自分の力になると信じていた。
とはいえ、さすがにこれから親方に電話するのは緊張する。なにしろ雇ってもらったのが昨日。まだ1日しか経っていない。わずか1日でやめるのは申し訳ないと思った。
しかし、もし続けてもあと1週間は見学だ。
今日のような灼熱地獄での見学が1週間も続く事を考えると、さすがにぞっとした。
見学が終わって仕事をさせてもらえるようになったとしても、車での移動も長すぎるし、体力的にも厳しい。続けるのは到底無理だ。
僕は意を決して、親方に電話をかけた。
勇気を出してなんとか、「やめます」と言った。
電話をかけると、親方はすぐに電話に出た。すると…
「おお、今日はどうやった?」と聞いてきたので僕はそれに便乗し、実はその事で話があって…といい、「やめます」というまでの流れを作ることにした。
・今日は1日見学をしたが、かなりきつかった
・大工の仕事は思っていた以上に大変で、自分には厳しい
・本当に申し訳ないが、今日でやめたい
こんな感じの流れで、「やめます」にもっていった。緊張していたし、かなりの勇気をふりしぼった。でも、これでやめることができる…。
ところが!
この後、事態は全く予想だにしていなかった方向に向かう。
最初は冷静っぽかった親方が、徐々に怒り出して…
そしたら、親方が口を開いた。
「太陽くん…まだ1日しか経ってないやろ。そんなんじゃアカンぞ。せめて1ヶ月は続けえや。」
親方の口調は厳しかったが、まだこの時点では冷静な口調だった。親方の言う事ももっともだ。わずか1日でやめる自分に対して、情けなさもあった。
しかし、今日1日で僕の心は折れていた。あまりにもキツすぎた。やめるという決心は変わりない。
「申し訳ありませんが、僕には無理なので…やめます」
やめますという所だけは、曲げてはいけないと思ったので、きちんと言った。しかし、親方はなかなか了承してくれない。
「せめて1ヶ月続けなさい。1ヶ月してアカンかったら、やめてもええ。せやけど1ヶ月は頑張って続けろや。」
僕はそれでも、「申し訳ありませんが、やめます」と言ったが…親方は1ヶ月続けろというのみ。
「やめます」「1ヶ月続けろ」そのやり取りが何回か繰り返された。
親方の語気が、だんだん強まってきている。なかなか電話を切れないことが怖い。
なんていうか、めんどくさい事になりそうな雰囲気が漂ってきた。イヤな予感がする…。
必死に力をふりしぼってやめますと言ってるのに受け入れてもらえず、だんだん精神的にきつくなってきた。
それでもがんばって、やめますと言った、次の瞬間だった。
親方が、ついにキレ始めたのだ。
親方による激しい恫喝。僕の心は2度折れた。
「おまえ、そんな簡単にやめんのか?お!? ということは、なんや? おまえワシらの仕事をナメてきよったんか!?おまえ、ワシらのことナメとんのか!?」
ヤクザのようなドスのきいた声に、今にも殴りかかってきそうな荒い言葉遣いだった。
もはや完全なおどし、威嚇、恫喝だった。
僕はそのドスのきいた声にびっくりし、言葉が出てこなかった。おまえ呼ばわりされた事もショックだった。
どうしていいか分からず、しばらくだまっていた。すると親方は、さらに強い口調で恫喝してきた。
「お!?聞いとんのや! おまえ、ワシらの仕事ナメてきよったんか!?ワシらのことナメとんのか!?」
僕は
「いいえ…決してそういう訳ではありません」
と小さな声で言うのがやっとだった。
「それやったら1ヶ月続けろや!」
いつの間にか、仕事をやめるやめないの話が、1ヶ月続けなければ親方の事をナメているという話になってしまった。
僕は、これ以上やめますと言っても無駄かも…という考えになってしまっていた。
このまま電話をブチっと切ってしまおうかと思ったが、住所を知られているので、親方が怒鳴り込んでくるんじゃないかという恐怖にとらわれた。
夜の10時を過ぎていたが、本気で親方が家にやってきそうな剣幕だ。
ここで、僕の心が折れた。親方に恫喝された事により、今すぐ電話を切りたいという気持ちが勝ってしまった。この場をやり過ごせるなら、1ヶ月続けよう…と。
「1ヶ月やればいいんですか…?」
「そうや、1ヶ月や!そしたらやめてもええわ!」
「それなら1ヶ月やってみます…」
ついに言ってしまった。絶望的な気持ちだった。1ヶ月やると言ってしまったからには、明日も拷問のような現場に行くしかない。
明日も4時起きだ。今から準備をしてすぐに寝ても、5時間ほどしかない。
こうして、心身にムチ打って2日目も見学に行った
次の日。今日も午前4時に起きた。ほとんど寝れていない。大き目のおにぎりを2つ作り、保冷ボトルにお茶を入れた。それと今回は忘れずに、財布を持っていかないと。
今日の天気予報も、最高気温39℃の快晴。それを見て、死にたいとさえ思った。
朝5時半に家を出て、6時前に事務所に到着。昨日と同じようにワゴンに乗り込み、2時間近くかけて同じ現場に向かう。
車内ではやはりタバコがきつい。
昨日、電動くぎ打ち機で足を打ち抜いてしまった社員さんも一緒だったが、足に包帯を巻いていた。
現場に到着すると、すでに暑い。今日もまた12時間、厳しい日差しに焼かれながら見学しないといけないのか…。地獄だった。
お昼休みに、またしても怖いことが起こった…
午前中を耐えて、お昼休みになり…みんなでお昼ご飯を食べていた。
僕の隣には、例の足をケガした社員さんがいた。
だが、僕の正面にいた番頭さんの機嫌が見るからに良くない。怖い顔で、ケガをした社員さんをにらんでいるような感じだ。
その時、ケガをした社員さんの携帯に電話がかかってきた。雰囲気からして、相手は親方らしい。ケガの具合を聞かれているようだった。その電話を終えた直後…だった。
番頭さんが自分の吸っていたタバコを、足をケガした社員さんに向かって投げつけたのだ。そして、怒気をはらんだ強い口調で、こう言った。
「頭カチ割ったろか!?」
どうやら、ミスってケガをしたその社員さんにそうとう腹を立てているようだ。鬼のような形相でにらみつけている。みんなに迷惑をかけてることを責めているのだろう。
足をケガした社員さんは、うなだれて申し訳なさそうな顔をしていた…。
ミスってケガをしたら…心配されるどころか、頭をカチ割られる現場なのか?ここは。
これも、ファミリーで仕事をしてるからか?ファミリーの掟なのか?ファミリーの中でミスをしたら許されない雰囲気だ。
今日もまた、住む世界が違うという事を思い知らされた。
2日目も耐え抜いたが、昨日以上にズタボロになった
こうして、午後からの見学も歯を食いしばって耐え抜いた。炎天下のもと、直射日光を延々と浴び続けた。
昨日、たった1日でチョコレート色になった肌。2日目が終わる頃にはさらに変色し、トマトみたいに真っ赤な色になっていた。
顔も、トマトのように真っ赤に腫れあがっていた。
水ぶくれみたいなのができて、汁が出ている。少し触るだけで、激痛が走る。かなりひどい火傷を負ってしまったみたいだ。
家に帰り着いたら、やはり夜9時を回っていた。僕は、最初から最後まで誰にも言わず自力でやり遂げようと思っていたが、あきらめた。
事情を話して、やめる電話を親にしてもらった。
後で聞いた所によると、親方は親にもそうとう突っかかり、なかなか電話を切らなかったそうだ。
「やめるんなら、なんで本人が連絡してこんのや!!」と言われたらしい。
今回の僕の挑戦は、終わった……。
トマトのように真っ赤になった顔になった僕を見て、親もかなり心配そうにしていた。
実際、大工見習いの挑戦が終わってからしばらく、火傷に苦しめられたのだ。冷やしても冷やしても、腫れがひかない。かなり重症のようだ。
2,3日すると、火傷した肌がブクブク・ジュクジュクになってきて、ズルッとむけてしまった。
腐ったような、イヤな臭いがしていた。火傷が治るまで、1ヶ月以上かかってしまった。
今回の、大工見習いのチャレンジ。文字通り、打ちのめされた。徹底的に打ちのめされた。
肉体だけでなく、精神もボロボロになった。やっぱり自分はダメだった…自分は何をやっても上手くいかない…自己否定感と、深刻なうつ状態になり、しばらく引きこもってしまった。
次にまた引きこもり支援団体に行けるようになるまで1ヶ月くらいかかった…。
大工挑戦の経験を、今ふりかえってみる
かなり長くなりましたが、引きこもりから大工に挑戦した話でした。読んで頂いてありがとうございました。
ときおり、大工に挑戦した経験を振り返ることがあります。
大工に挑戦して、大失敗してしまったのですが…とりあえず、当時の自分にはまだ仕事は無理だった、という事が分かりました。
やってみて分かった事ですが、大きな代償を払ってしまいました
それに、最初にチャレンジする所としては、少し厳しすぎたかもしれません。冷静に振り返ると、明らかにブラック企業だったと思います。
すぐに怒鳴る人とか、怖い人がいる所は自分には無理だとわかりました。建設現場とか土木系とかも向いていないと感じました。(トラウマによる思い込みもあると思いますが)
さらに、労働時間や祝日や社会保険など、労働条件は詳しく見たほうが良いです。
僕の行った工務店の求人は、その辺が全然書いてなくて、今思えばかなり危険な会社でした…。
もし、頑張って続けていたら…ともチラッと思います。でも続けるためには、しっかり準備ができてるということが大切、という事がよくわかりました。
やってみたからこそ分かった真実。無理しすぎはいけないです。無理しすぎると、詰みます。
引きこもりからいきなり就職を考えている人も、この記事を読んでくださってる人の中にいるかもしれませんね。決して無理はしないで下さい。
いきなりの就職が上手くいく方もいるでしょうが、なかなか大変なのが現実ではないかと思います。
やはり、支援団体やサポステから始めるのが近道
いきなり働くよりも、引きこもり支援団体やサポステに通って少しずつ力をつけていくのが、遠回りのように見えて実は近道なんだとつくづく思います。
仕事も、いきなり正社員ではなく週2日くらいのアルバイトから慣れていって。
少しずつ時間や日にちを増やし、フルタイムで働けるようになっていく…それが近道だし、長続きさせるコツだと感じます。
大工の求人は新聞に入ってた求人チラシから見つけましたが、求人チラシは引きこもりにほぼ理解がないというのが実情ですね。なので、引きこもっているけど、就職をしたい!という人は…
やはり引きこもり支援団体に行く所からスタートするのが最も近道で、現実的な方法だと思います。
支援団体は同じ経験をした人ばかりですし、しっかり就職のための準備をすることができますし。
引きこもりからの就職に関する情報もあるし、同じメンバーさんから話を聞いて刺激を受けたりする事も、就職につながると思います。
何度も書きますが、決して無理はしないで下さい。
準備ができてくれば、無理しなくても活動していけるようになります。
この記事のまとめ
・大工の親方に電話して「やめます」と伝えた。しかし親方に激しく脅された
・2日目も無理して現場に行った結果、大やけどを負ってしまった
・ひきこもりから就職する場合は、無理せず少しずつやっていくのが近道
太陽